再生医療科便り(15)〜樹状細胞ー活性化リンパ球療法への道5「治療法の実際」〜
2018年03月17日
前号までに、「樹状細胞ー活性化リンパ球療法」のあらましについてお話ししました。
今回は、この治療法の実際についてお伝えします。
この、ガンに対する治療法には二人の主役がいます。一人は「リンパ球」であり、もう一人は「樹状細胞」です。どちらの細胞も血液の中にあります。ですから治療の第一歩は患者様より血液を得ることです。そしていくつかの手順を踏んで、リンパ球と樹状細胞を別々に取り出します。
リンパ球は、以前お話ししました「活性化リンパ球療法」と同じように、二週間かけて「元気にして」、「数を増やします」。
一方、樹状細胞は、リンパ球と同じように「元気にして数を増やす」のですが、それ以外にもう一手間をかけます。以前お伝えしましたが、樹状細胞の特徴は、敵(ここではガン細胞ですが)の特徴をリンパ球に教えることです。そこで、患者様より得た腫瘍(大抵は外科的に切り取られた物ですが)を、細かくして樹状細胞が育っているところに入れるのです。細かくしているのでガン細胞そのものはほとんどなく、そのかけらが樹状細胞に与えられます。樹状細胞はこのかけらをモグモグと食べて、「このガン細胞はこんな特徴を持っているよ」と旗立台の旗のように、自身の外に掲げます。これに要する期間がやはり二週間とされています。
つまり、二週間経ったところで、リンパ球も樹状細胞も準備万端というわけです。そして、リンパ球は「活性化リンパ球療法」と同じように、点滴により患者様の体内に入っていきます。一方、樹状細胞は、腫瘍があったところの近くで身体の外から触れるリンパ節に直接注射します。
点滴で体内に入った「元気な」リンパ球は、巡り巡って樹状細胞を注射されたリンパ節にたどり着きます。そこで、樹状細胞が、今ターゲットにしているガン細胞はこれだよと伝えるわけです。リンパ球は自身が持っている「手配書」と樹状細胞が示す手がかりを照らし合わせます。そして、手がかりと合うリンパ球は一躍奮い立ち、存在するガン細胞にアタックをかけます。
ここで、一つ疑問が出てきます。先ほど、前もって取り出した腫瘍を使って、樹状細胞にその腫瘍の特徴を挙げさせると申し上げましたが、取り出した腫瘍がない場合はどうするのかということです。つまり、外科的な治療ができない腫瘍についてどうするのということです。
これについては、身体の表面から触れる腫瘍については、何も伝えられていない樹状細胞を直接その腫瘍に注射します。現場にいきなり放り込んで、実地で訓練するということです。
では、表面から触れることのできない腫瘍についてはどうするのか。これについては、私はまだ勉強中でして、こうしたらいいという答えを持っておりません。これからの課題です。
これについては、次号以降で、分かった範囲でお伝えしたいと存じます。そして、他の腫瘍の治療法、特に外科的治療法との関係についてお伝えできればと思います。
再生医療科 齊籐正二