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再生医療科便り(19)〜病気との付き合い方2〜

2018年03月23日

再生医療科便り(19)〜病気との付き合い方2〜

 前回、免疫療法の特徴を外科療法や化学療法と比べることで記しました。その特徴は「腫瘍を囲い込むこと」、別の言葉に置き換えれば、「これ以上悪くしない」、「腫瘍を身の内とすること」ということです。
 
 図にそれぞれの治療法のイメージを描きました。外科療法は悪い部分は取ってしまう。放射線療法もほぼ同様で悪い部分を壊してしまう。化学療法は薬でやっつけてしまう。免疫療法は、図にあるように身動きをとれなくしてしまう、あわよくばやっつける(リンパ球は腫瘍細胞をやっつける能力を持っています)、総体として腫瘍に好き勝手をさせないと言うことです。
 
 実際の現場では、外科療法や放射線療法に加えて化学療法というように複数の治療法を併せて行うことがほとんどです。外科、放射線で取り切れなかった部分、壊しきれなかった部分を化学療法で潰していく。逆もあり化学療法で腫瘍を小さくして他の治療法で取り切ってしまう。
  免疫療法も他の治療法と組み合わせることで、全体として腫瘍に対して効果的な治療となります。
 
 しかしながら、先に述べた三つの治療法が患者様の事情から行うことが出来ない場合に、最後の砦として免疫療法が登場することもあります。それは一言で言えば、患者様に対する負担が少ないからです。そしてこの時、先ほど述べた免疫療法の特徴が浮き彫りになります。すなわち、「これ以上悪くしない」、「腫瘍を身の内とすること」ということです。
 
 ここで、前回述べた「治る」ということをどう捉えるかと問題が生じます。「治る」=「元どおりにする」と考えれば、免疫療法は力不足の感が否めません。一方で「治る」=「これ以上悪くしない」と捉えるのであれば、免疫療法は有効であります。このことは尽きるところ、病気とどうつきあっていくのかということに触れることになります。この部分で、患者様、飼い主様は悩みます。そして治療者もその都度悩みます。
 
 患者様のその後の人生をどのようなものにしていくのか、飼い主様と治療者は何度も対話を重ねることになります。インフォームドコンセントの本質はそこにあると私は思っております。対話を諦めないこと。
 次回からは免疫療法も含まれる先端治療についての私見を記したいと存じます。

  再生医療科 齊籐正二