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再生医療科便り(22)〜免疫学について〜

2018年03月30日

再生医療科便り(22)〜免疫学について〜

 ここまで免疫療法についてお話して参りました。免疫の持つ腫瘍をやっつける力を生かして腫瘍の治療を行うというのが免疫療法と言えます。この療法の説明のため、免疫を担う細胞、これを免疫担当細胞と言いますが、この細胞の働き方を述べました。あわせて腫瘍細胞の特徴を記しました。そして免疫担当細胞がどのようにして腫瘍細胞をやっつけるのかを書きました。
 当初より、免疫療法を紹介することに主力を置いたため、免疫と腫瘍の関係に焦点が当てられました。
 
 しかしながら、免疫と腫瘍は最初から結びついていたわけではありません。古代ギリシアの頃にはすでに免疫という言葉が意味する「病気を免れる」、正確には二度目に病気になっても軽くすむことが知られていましたが、そこで言われる病気とは今の言葉で言えば感染症と呼ばれるものでした。免疫が「学」として確立されるきっかけになったジェンナーの種痘もその対象は天然痘と呼ばれる感染症でした。
  すなわち、免疫学の生い立ちには感染症が関わっていたのであり、腫瘍ではなかったのです。
 
 これから皆様にお伝えすることは、免疫学がその発展において腫瘍と関わるようになった道筋です。というよりも免疫学そのものを俯瞰しようと思います。ですので、最初は腫瘍の登場しない免疫学の歴史に触れることになります。もちろん浅学の私のことですから、間違いもあると思います。その節はご指摘下されば幸いに存じます。
 
 では、なぜそのような回りくどいことをするのか。それは免疫学の裾野はかなり広く、その中に腫瘍という建物が立っています。立っているのは腫瘍だけでなく、自己免疫疾患という建築物もあります。免疫学全体を見渡すことで、もしかすると建物の間に道を見つけることができるかもしれません。見つけることができれば、免疫療法という腫瘍に対する治療法は自己免疫疾患にも役に立つと考えられます。
 
 次回から免疫学の始まりについて記したいと思います。
 
  再生医療科 齊籐正二