再生医療科便り(23)〜獲得免疫について1〜
2018年03月31日
晴れた日の空がなんとなく高いような気がします。
皆様におかれましてはいかがお過ごしのことでしょうか?
今回より免疫学の歩みを辿っていきます。まずは「獲得免疫」です。
ところで、知らないことは山ほどありますが、知っているつもりになっていることも同様であることを、今回のテーマである獲得免疫の稿を起こすにあたって改めて思い知りました。
獲得免疫の最初の主役は皆さんご存知のジェンナー(Edward Jenner)なのですが、私はてっきりスイスあたりのお医者さんと思い込んでいたのですが、実はイギリスの方でした。それから、牛痘接種以前に人痘法すなわち天然痘そのものを接種することで天然痘予防を図っていたとのことです。思い切ったことをやったものですが、Jennerが以前から天然痘予防に関心を持っていたことが窺えます。それもそのはずで、ジェンナーが生きていた18世紀から19世紀でも天然痘に対する対策に決定的なものはなく、Jennerも関わった人痘法がほぼ唯一の対策でしたが極めて危険の方法であったようです。一方、天然痘は感染する力が強く、死亡することの多い伝染病でありました。
Jennerにとって幸いなことは、彼の生きていた頃に牛の乳搾りなどで牛に接する人で牛痘にかかった人は天然痘にならない事が分かってきたことでした。牛痘は天然痘に比べるとはるかに症状の軽い感染症でした。彼はこの点に着目して、十八年の時間をかけてより安全で効果的な牛痘接種の方法を編み出したとのことです。
この辺の事情については皆様もご存知ではないかと思います。
最後に次回への橋渡しと自分への宿題として二つの事柄に触れておきます。
第一は、牛痘接種で天然痘が予防できるその仕組みとは何か。
第二は、獲得免疫とは何かです。この言葉には罠が仕掛けられており、免疫学に多少とも心得のある人が最初に引っかかります。
この二点を次回以降の話題にしたいと存じます。
再生医療科 齊籐正二