たいせつブログ

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診療室の風景(1-2)〜細胞診について(続き)〜

2018年04月24日

今回は、前回お話ししました「細胞診」の続きについて触れます。
 
 前回、患者様より細い注射針を使って、腫れ物の一部をを得て、これを顕微鏡でのぞくと言うことを述べました。
 
 この部分で省略しているところがあり、実際は、注射針で得た腫れ物の一部をスライドガラスに吹き付けて、乾燥したら二種類の色をつけて染めます。
 染め上がったところで、顕微鏡で観察します。顕微鏡には三種類の拡大倍率があり、それぞれ弱拡大(4倍)、中拡大(10倍)、強拡大(40倍)とあります。これに肉眼で見る(0倍)が加わります。
 
 肉眼では、腫れ物の大きさ、色、臭い、表面の状態、液体が出ていたらその色や濁り具合(この段階で液体をスライドガラスにくっつけて観察することもあります)を見ます。また、腫れ物が皮膚にくっついているのかそうでないのか、下に例えば筋肉にくっついているのかどうかを、腫れ物を少し動かしてみて、その動き具合で推測します。また少し、つまんでみてコロコロしたものか、ベターと広がっているのかも推測します。この段階で、膿みたいなものが観察できたら、バイ菌が入って化膿した線も頭に入れます。ただし、化膿を伴った腫瘍もあるので予断はできません。
 
 次に、弱拡大で、見えるもの全体の印象をつかみます。この倍率では細胞は丸く見えます。赤くて丸いのは赤血球であることが多いです。また、フワフワしたものは角質であることがよくあります。この倍率で、細胞の種類が多いのか少ないのか見ます。また、塊をなしているのかそうでないのか見ます。細胞の種類が多いと炎症を疑いますが、そこに塊を含むようでしたら少し慎重になります。理由は、腫瘍に炎症を伴っていることがあるからです。
 
 さて、細胞の種類が多くて、塊もなければ、炎症を疑い、強拡大に移ります。バイ菌の確認、細胞の種類(これで急性の炎症が慢性のものか推測できます)を見ます。
 
 フワフワしたものが多ければ、強拡大で、角質であることを確認して、近くに角質を作っている細胞がないか探します。あれば、その細胞の普通さ具合を見て、腫瘍の良性・悪性を推測します。
 
 問題は、細胞の種類は多いけれど、ところどころ島のように細胞が塊になっている場合や、細胞の種類が少ない印象を受けるものです。なぜなら、腫瘍を疑うからです。このような場合、中拡大にして、細胞の塊を見たり、細胞の種類が少ない場合は、何カ所か切り取るようにして観察します。ここでは細胞の大きさのそろい具合、核の大きさのそろい具合を見ます。あまりばらつきがあるようでしたら、この段階で悪性の印象が強くなります。
 
 最後に、強拡大にして細胞の詳細を観察します。核が沢山ないかしら、核が細胞の中でえらく場所を占めていないかしらなど。これにより良悪を推測します。
 
 もっとも大事のことは、目の前に見えている細胞の描く像は、色々な経緯を経て作られたものであるということです。例えば、リンパ球ばかりが見える、おまけに核が二つあったりすると、病原体の勢力が長く強く続いているのか、リンパ腫という腫瘍なのか迷うことがあります。この時助けになるのが飼い主様からの情報なのです。「ずっと前からあったよ」、「急に大きくなってきたよ」などなど。これは、細胞診だけでなく、取り出した腫れ物全体を対象にする組織検査でも同様です。
 
 話しが少々込み入りました。ご勘弁下さい。分からないことがありましたいつでも遠慮なしにお尋ね下さい。
 
  副院長 齊籐正二