診察室の風景(23)〜血球計数器(その3)〜
2018年06月01日
血球計数器の話しの続きをしたいと存じます。血球計数器にある「計数」とはものを数えるというほどの意味です。
目に見えるものを数えるのはそれほど難しくありません。もっとも交通量計測をしている人の計数器の扱い方は尋常ではありませんが。
目に見えないものを数えるにはどうしたらよいのでしょうか。
前回、怪しげな空想と絵でお伝えしたかったことはこの一点に集約します。
「別のものに置き換える」と言うことです。すなわち、先の空想では、ゲートを通過している人の体型を赤ランプが点灯している時間に置き換え、また人の通過量を赤ランプの点滅の間隔に置き換えるということです。ゲートのかたちを工夫することで。
計数工学と言われる工学の分野の眼目の一は、目に見えないものの数を目に見える量に変えるということです。
血球計数器において生命線は「アパーチャ」と呼ばれる部分だと申し上げました。ここを血液の中に含まれる赤血球や血小板や白血球が通過します。このとき、検出器チャンバーに流れている電流が変化します。これは赤血球などが電気を帯びていることに由来します。大切なことはそれぞれの血球で電流の変化が違うと言うことです。この違いをとらえることで、「いま、赤血球が通った」、「今度は血小板だ」というように感知することができ、その度ごとにそれぞれの血球についての計数器の目盛りを一つ進めることで、ある体積を持った血液についてそれぞれの血球数をカウントすることができます。次号に続きます。