診察室の風景(26)〜血球計数器(その6)〜
2018年06月08日
血球計数器は文字通り、血球を数えるもので、赤血球がいくら、血小板がいくらと自動的に数える器械です。この個数に赤血球ひとつの体積をかけると、赤血球全部の体積を求めることができます(図1)。これを利用して一定の体積の血液に対する割合を求めることができます。これはHCTの定義の沿うもので、ここでは「血球計数器で測ったHCT」と称することにします。
HCTの定義とは血液中に占める血球の体積の割合ですが、赤血球の体積が血球の大部分を占めるため、赤血球の体積の血液中に占める割合として良いとされています。
さて、HCTの求め方にはもう一つあって、それはヘマトクリット毛細管を使う方法です。ヘマトクリット毛細管は図2のような極細で中空のガラス管です。これに血液を吸わせて図3のような遠心器を使うと、図4のように重い血球が一方に集まります。端より赤血球、白血球、血小板ですが、後の二つはほとんど見えません。これを元に図5のように計算すると(実際は便利な計算板があるのですが)、やはりHCT求められます。これを「毛細管で測ったHCT」と言うことにします。
ここからは推測です。遠心器を使ってのHCTの求め方は、いわば血球を毛細管の一方にぎゅうぎゅう詰めにする方法で、この様子を「ひとまとめにする」という意味のpackedを使いPacked Cell Volume(PCV)としたのではないでしょうか。すなわち、毛細管で測ったHCT=PCV。
問題はこのPCVと「血球計数器で測ったHCT」が等しいかということです。等しくないというのが答えです。それは遠心器でぎゅうぎゅう詰めにされた赤血球の間に血漿がほんのわずか含まれているためです(図6)。すなわち、「毛細管で測ったHCT」あるいはPCVは赤血球プラス微小な血漿の合算したものが一定の血液に占める割合であるのに対して、「血球計数器で測ったHCT」は赤血球が一定の血液に占める割合です。
書籍、webなどを見るとHCTとPCVは等しいとか、あるいは等しくないとか書かれていますが、どちらもある意味正しいと言えると思われます。
副院長 齊藤正二